VIII 設立に関する責任
罰則については§486I、§489(1)、§490−§493、§498I(1)(4)(9)、II、§498ノ2など。
 1 会社に対する責任
(1)任務懈怠責任
発起人=§193I→過失責任・連帯責任。総株主の同意がないと責任免除できず、代表訴訟が認められる(§196)。取締役・監査役は§173ノ2、§184I、IIの調査につき任務懈怠があれば責任を負う(§266I、§277。このとき発起人も責任を負うときは連帯責任となる=§195)。

(2)資本充実責任
いずれも会社成立を条件として生ずる無過失責任。連帯責任。また発起人と並んで会社成立当時の取締役も責任を負う(平成2年改正による資本充実責任の加重)。この責任の免除はできない。発起人への代表訴訟が認められる(§196)。
A引受担保責任=§192I。発起人と取締役は共同引受人(§203I)となる。
B払込・給付担保責任=§192II。この責任を履行しても発起人・取締役は当然には株主とならない。III項参照(さらに争点T19「払込・給付担保責任とその履行者の地位」参照)。
C財産価格填補責任=§192ノ2。

 2 第三者に対する責任
§193II→(重)過失責任・連帯責任。他の発起人に設立事務を一任する者には重過失が認められる。取締役・監査役は§173ノ2、§184I、IIの調査の任務懈怠につき悪意・重過失があれば責任を負う(§266ノ3、§280。このとき発起人も責任を負うときは連帯責任となる=§195)。

 3 疑似発起人の責任
§198。←株式引受人を保護するための禁反言則に基づく責任。資本充実責任と、会社不成立のときの払込金返還に関する責任を負う。発起人ではないから、発起人としての権限はなく、したがって任務懈怠による責任は負わない(資本充実責任・会社不成立のときの責任を負う)。

IX 会社不成立・設立無効
 1 会社不成立
会社が成立すれば設立中の会社は成立後の会社に姿を変える。
設立手続が頓挫して会社が成立しないで終わる場合(会社不成立)、設立中の会社という権利能力なき社団の解散が行われることになる。→清算手続に入り、清算中は清算の目的の範囲内で存続し、清算終了により完全に消滅する。
◇費用負担:不成立確定までの間に要した費用は、本来ならば、権利能力なき社団の構成員(株式引受人(これには発起人も含まれる))の負担ということになるが、株式引受人保護のため、§194Iは政策的に株式引受人を第三者的に取扱い、設立中の会社の機関である発起人のみに全責任を負わせ、II項は株式引受人が設立費用を負担しないことを明らかにするための規定(株式の払込済であっても返還される)(多数説)。争点T20「会社不成立の場合の発起人の責任」参照。

 2 設立無効
(1)設立無効制度
設立無効を一般原則に委ねると、だれでもいつでもどのようにでも無効の主張ができ、無効確認判決があってもその効果は訴訟当事者間にしか認められない。→利害関係者が多種多様に存在する株式会社の場合には、法律関係の画一的処理のため設立無効の訴えの制度がおかれている。

(2)無効事由
設立の規制の違反がすべて無効事由となるわけではなく、会社の法的存在を消滅させる必要のある重大な事由が無効事由となる(できるだけ限定的に解する)。
→定款の絶対的記載事項の瑕疵、定款の認証のないこと、発起人全員の同意を要する株式発行事項につき全員の同意のないこと、設立に際して発行される株式数が授権資本をこえる又は授権資本の1/4未満のとき、資本金が1000万円未満のとき、創立総会の不開催・創立総会の調査手続の瑕疵、設立登記の無効など。

◇株式の引受・払込の欠缺がある場合に、設立の無効原因となるか争いがある(争点T18「発起人の資本充実責任と設立の無効」参照)。
A判例・多数説=欠缺の程度が軽微である場合には、発起人・取締役に引受・払込担保責任を負わせれば足り、あえて会社の設立を無効とするまでもないが、欠缺の程度が著しいときは設立無効原因となる(欠缺の程度が著しくても担保責任が履行されれば無効原因にならないとする説もある)。
B無効原因説=欠缺が軽微でも発起人・取締役が担保責任を履行しない限り、設立無効原因となり、他方、引受・払込の欠缺がいかに大きくても担保責任が履行されれば瑕疵は治癒される。

(3)設立無効訴訟
A設立無効は設立無効の訴えをもってのみ主張しうる(会社成立の日から2年内に株主・取締役・監査役に限って提起できる。§428)。
B無効判決の効力:無効判決は対世効をもつ(§428III→§136III→§109I。原告敗訴の場合、対世効はない)。無効判決が確定するとその登記がなされる(§428III→§137)が、株主や第三者の間に生じた法律関係に影響を与えず(§428III→§136III→§110)、解散の場合に準じて清算がなされる(§428III→§138。遡及効の阻止)。

 3 会社の不存在
設立登記がなされても、会社と認められるものが存在しなければ、設立無効の訴えを提起するまでもなく、一般原則によりだれでもいつでもどのような方法によってもその不存在を主張できる。